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  • 横浜バレエフェスティバル2024公演映像配信
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The Artists-バレエの輝き-
五十嵐大地さんインタビュー

Headshot Daichi @Andrej Uspenski

先日のロイヤル・バレエ来日公演では、「ロミオとジュリエット」のリード・マンドリンを踊って客席を熱狂させた若手ダンサーの五十嵐大地さん。
小学校5年生の時にユース・アメリカ・グランプリ(YAGP)のニューヨークファイナルでホープアワード(優勝)を受賞し、13歳でロイヤル・バレエスクールに入学して注目を集めた。2020年に同校を首席で卒業してロイヤル・バレエの研修生として入団し、昨年秋に正式団員となった。
ロイヤルの正式団員としては最初のシーズンだったが、目の覚めるような華麗なテクニックとスター性を持ち合わせ、すでに『シンデレラ』の道化を踊るなど少しずつ大きな役につくようになっている。そして来シーズンからはファースト・アーティストへの昇格も決まっている。

その五十嵐さんが、8月11日より開催される「The Artists-バレエの輝き-」公演に出演する。ロイヤル・バレエのダンサーたちだけでなく、アメリカン・バレエ・シアターやニューヨーク・シティ・バレエのダンサーとの共演となる話題の公演への抱負を語っていただいた。

インタビュー:森 菜穂美

優秀な人たちが集まる場所で学べたのが幸せだった学生時代。

Daichi@Andrej Uspenski

Q: 五十嵐さんはロイヤル・バレエの団員として日本のツアーで踊られるのは今回が初めてでしたね。ツアーを終えて、いかがでしたか?

 

五十嵐:日本のお客さまに見ていただくのは緊張しました。日本のお客さまは、世界中からいろんなバレエ団が来るし、いいものをたくさん観ていると思うので、良くなかったら良くないダンサーだと思われてしまいます。自分の生まれた国ですし、やはりいい踊りを踊りたいと思いながら舞台に立ちました。僕も自分が出演していなかったら、ロイヤル・バレエの来日公演は必ず観に行きたいと思っていました!

 

Q: 『ロミオとジュリエット』ではリード・マンドリンを踊られましたが、街の人々の一人としても舞台に立たれていましたね。ロイヤル・バレエでは、舞台に立っている人全員が細かい演技をしていますが、どのように演技は習得されましたか?

 

五十嵐:僕は(一番下の階級である)アーティストなので、今回はマンドリンのリードを踊る機会を頂いたのが奇跡であって、1年間を通してほぼずっと僕は舞台で役名の付いていない役をやり続けてきました。それが僕のメインの仕事です。もちろん最初は戸惑いましたが、ロイヤル・バレエにはお手本になる先輩方がいるので、先輩の踊りを見ながら真似して学んで、その先輩方に助けられました。公演の数が多いので経験となり、僕の表現力や技術力の向上の良い練習にもなるので、よかったと思いました。
例えば30回公演があったら30回全部同じ演技はないのです。毎公演、周りを見ながら、どのような設定で行くか、自分の今の気分でこう行くと考えて演技をします。どのように演技をするかは決められておらず、毎回同じ演技をする必要もないと言われています。僕はこのような勉強が舞台でたくさんできたので、これから何か大きい役をいただいたときに、その経験が絶対に生きると思っています。

Daichi 2 @ Andrej Uspenski

Q: 出番がない時も、舞台袖や、客席で公演を観ていますか?

 

五十嵐:頻繁に観ています。僕はバレエそのものが大好きですし、好きでなければこの仕事はできません。

 

Q: 五十嵐さんは。13歳のときにロイヤル・バレエスクールに入られて親元を離れて、イギリスに行かれたし、スクールも厳しいところだったので大変だったと思うのですが、いかがでしたか?

 

五十嵐:僕は自分がすごく行きたかった学校に入れて幸せでした。学校は忙しかったし、やることがたくさんあったので、寂しいとか嫌だっていう感情を抱いたことは一度もないです。優秀な人たちが集まるところで学べたのが幸せでした。その人たちに負けたくない、同じレベルでやりたいと思っていましたし、幸せだったので大変だと思わなかったのかもしれませんね。

 

「自分が上手いとは一度も思えないような場所にいるからこそ、成長できます」

RJ @Ian Gavan

Q:ロイヤル・バレエでは『シンデレラ』の道化と『ロミオとジュリエット』のマンドリンの他にソリスト役は踊られていますか。

 

五十嵐:カンパニーではほかにはソロは踊っていないですね。でも外でガラ公演に出演し、コボー振付の『ロミオとジュリエット』でマキューシオを踊るなど、たくさんチャンスをいただきました。カンパニーでは実績もない僕を信頼して呼んでくださる主催者には感謝しています。そのような経験があったから大きい役がついたときも、体が覚えているので踊れました。今の僕があるのは僕を信頼してくれた人たちのおかげでとても感謝しています。
バレエは一人ではできません。僕が一人で頑張ってもだめなのです。バレエは人の感情、その人の気持ちがなければできません。

 

Q: ロイヤル・バレエのどこが一番いいところだと思いますか。

 

五十嵐:環境と周りの人ですね。頑張るのは当たり前だから、どこで頑張るかが大事だと思います。やはりレベルが高いところで頑張れて自分が上手いとは一度も思えないような場所にいるほうが上に行けて、そこで止まらないで成長できると思います。すごい人たちしかいないから、そこが僕のこのカンパニーをすごく好きなところですね。素晴らしい方たちが多いので、みんな大好きです。

 

「僕はどれだけいいダンサーになれるかを求めて、毎日生きています。小林ひかるさんは、僕のキャリアのために今回素晴らしい経験を与えてくれました」

Q:今回の公演について伺います。今回、(芸術監督の)小林ひかるさんからこの公演への出演依頼を受けてどう思われましたか。

 

五十嵐:僕、ひかるさんが大好きなので、ひかるさんに呼んでいただいて僕は幸せでした。みんなのお母さんみたいな方で、「大ちゃん!」って呼ばれています(笑)。

 

Q:この公演では、新作があったり、バレエ団の垣根を越えての共演があったり、いろいろ工夫を懲らされたプログラムで、とてもユニークですよね。

 

五十嵐:僕もおかげでニューヨークに行くことができて、アメリカのバレエにも触れることができました。僕のこれからのダンサーとしてのキャリアにもいい経験をさせていただきました。ひかるさんは僕の将来を考えて、僕をニューヨークに連れていってくださったと思うので、とても感謝しています。

タイラーペック新作のリハーサル @Andrej Uspenski

Q: 今回は(ニューヨーク・シティ・バレエのプリンシパル)タイラー・ペックさんの新作を初演されますね。

 

五十嵐:タイラーはすごくいい人です。彼女のYouTubeやInstagramを見てこの人は動きがすごいなと思っていたら、本当にニューヨークで会えたので僕は嬉しかったです。
彼女とのクリエーションはとても楽しかったです。アメリカンな感じ、異文化でした。いつも普段のイギリスでの生活に慣れている僕に、このような刺激があるのはすごくいいですよね。

 

Q: タイラー・ペックさんの作品はバランシンの影響がある作品だということですが、ロイヤル・バレエの来日公演では、五十嵐さんは『ダイヤモンド』のコール・ド・バレエで出演されていました。バランシンの作品はほかに踊られたことはありますか?

 

五十嵐:僕はカンパニーに入ってまだ3年目なので、他に経験はないですが、これから次にバランシンを踊ることがあったときに、動けたらいいですよね。ひかるさんはそれも見越して、僕に今回の経験をさせてくださったのだと思います。

 

Q: そのほか、アレクセイ・ラトマンスキー振付の『7つのソナタ』という、初めて踊る作品にも挑戦されます。

 

五十嵐:新しい作品を踊ることは僕の経験になるし、いいダンサーになるために必要なことだから。最終的には、僕がどれだけいいダンサーになれるかを求めて毎日生きています。必要なことだから嬉しいですし、頑張りたいです。

 

「バレエは夢の世界、その夢の世界を大切にしているのがロイヤル・バレエ」

@Andrej Uspenski from Dancers Diary

Q: 今回はアメリカン・バレエ・シアター(ABT)の山田ことみさんと共演されます。バレエ団の枠を超えての共演です。一緒にABTでリハーサルを行ってきて、どのようなケミストリーを感じられましたか?

 

五十嵐:山田さんとは年がほぼ同じで、同世代だから、ジェネレーションギャップも感じないし、一緒にリハーサルをしていてとても楽しかったです。彼女は上手だし、モナコのプリンセス・グレース・アカデミーを卒業しています。モナコの学生さんは立派で教育がしっかりされているので、その卒業生の人たちはみんな素晴らしい人たちですが、とりわけ彼女は優れていると思います。

 

Q:今回の公演では「海賊」も踊られますね。YouTubeには、五十嵐さんが踊る海賊のアリのバリエーションを捉えた動画があって、見事な跳躍を見せていますね。

 

五十嵐:あれは入団して1年目の踊りで、もう2年前なので今は違った踊りです。二度と同じ海賊はありません。僕が一番尊敬する人は熊川哲也さんですが、熊川さんの『海賊』は死ぬほど見ました。僕の『海賊』のアリの基準は熊川哲也さんですね。

 

Q: 五十嵐さんが、より良いダンサーになるために、大事にしていることは何ですか。

 

五十嵐:僕が楽しむことだと思います。バレエは大変なので、好きじゃなかったら絶対続けられないと思います。そこが一番大事だと思うのです。いいことばかりではありません。僕が1年過ごした中で、皆さんに褒められるような成果で嬉しい思いはありましたが1%くらいで、あとは悩むこともあります。クラスやリハーサルをやって全然うまくいかなくてどうしようと思うことも多いのです。でも、バレエって夢の世界であってお客さんがお金を払って舞台を観ているので、日ごろの大変さを知られない方がいいと思うこともあります。夢を売る仕事ですから。その夢の部分をロイヤル・バレエは大切にしていて、配信やシネマなども通して伝えていると思います。

 

Q: 五十嵐さんがこれから踊りたい役は何でしょうか。

 

五十嵐:将来的な話で言うと、僕の大事な人生の場面で『ドン・キホーテ』のバジルを毎回踊っていて、YAGPのニューヨークのファイナルや、スクールの3年生のテストなど全部バジルでした。この役は僕の中で、ライフターニングポイントなので、踊りたい役です。来シーズンのオープニングが『ドン・キホーテ』でさすがに今回はこの役は踊りませんが、いつか僕もロイヤル・バレエでバジルをやりたいです。

 

Q:今回の来日公演で、ファンがたくさん増えたことだと思います。その日本のファンにメッセージをお願いします。

 

五十嵐:今、僕はまだ、なりたい自分の途中経過ですが、それでもやはり今まで経験したこと、学んだことを皆さんにお見せできれば嬉しいです。観に来てくださるお客さんには、僕の踊りを観て、「もう1回観たい」と思ってもらえるようなダンサーになりたい、お客さんの心を動かせるような踊りをしたいです。

これから世界的なスーパースターへの階段を上っていく五十嵐大地さん。周囲への感謝も忘れずに、でもひたむきに努力を重ねて自らを磨き続けている、まだ21歳と伸び盛りの彼の今の輝きを目撃できるのが、「The Artists-バレエの輝き-」公演。お見逃しなく!

 


「The Artists – バレエの輝き – 」

 

会期:2023年8月11(金祝)18時 Program 1 & 4
       8月12(土)13時 Program 3 & 1
    8月12(土)18時 Program 2 & 4
    8月13(日)13時 Program 3 & 2
会場:文京シビックホール 大ホール
出演:
マリアネラ・ヌニェス、ワディム・ムンタギロフ、マヤラ・マグリ、マシュー・ボール、
金子扶生、ウィリアム・ブレイスウェル、五十嵐大地(英国ロイヤル・バレエ)/
タイラー・ペック、ローマン・メヒア(ニューヨーク・シティ・バレエ)/
キャサリン・ハーリン、アラン・ベル、山田ことみ(アメリカン・バレエ・シアター)
演奏:蛭崎あゆみ、 滑川真希、山田薫、松尾久美

公式サイト:https://www.theartists.jp/

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