南仏カンヌの老舗バレエ学校
ロゼラ・ハイタワー訪問記
2015年の11月27日南仏カンヌにある老舗バレエ学校、ロゼラ・ハイタワーの改装完成式に行ってまいりました。カンヌは映画祭で有名なフランスの地中海に面したリゾート地で南仏特有の明るく穏やかな美しい町です。
正式名はEcole Superieure de Danse de Cannes-Mougins ROSELLA HIGHTOWERといいます。1961年ロゼラ・ハイタワー女史の創立以来、インターナショナルな教育を保っとうに世界中に優秀なプロのダンサー、振付師、先生を輩出しているバレエ学校です。
校長はロゼラ・ハイタワー以降、モニク・ルディエールを経て2009年より現在のパオラ・カンタルポが就任し、カンヌの町ムージャンの支援のもと以前からある広大な敷地に新しく四つの稽古場、教室、寮を整備しました。2017年にはさらに大劇場、音楽学校、造形芸術をも含む巨大芸術センターも完成予定です。
現在のバレエ学校もインターナショナルな教育に根付いて、15カ国からなる国籍の生徒たち11歳から23歳まで約150人の若いダンサーが学んでおり、クラッシックバレエ、コンテンポラリーダンス、ジャズダンス、音楽、演技、ダンス史、解剖学などあらゆることを学ぶことが出来ます。
そして本校最大の特徴は最終学年になるとジュンヌ・バレエ団としてあらゆる振付家の作品や生徒達で創作した作品などをフランス国内外で公演する機会が与えられます。
プロフェッショナルになるには舞台経験が最も重要です。観客の前で踊る事によって 技術、表現力、感性、舞台でのマナーなど稽古場だけでは補えないものが沢山体験できるのです。ロゼラ・ハイタワー出身のダンサーや振付家が世界中で活躍しているはこの様な下地があるからなのですね。
新設された稽古場はどれも南仏の明るい自然光が入り、天井も高く清潔感にあふれています。稽古場の他にもバレエ学校の敷地内に50室ある寮も今回新設され、カンティーン(給食室)も完備され、若いダンサー達の健康管理にも力を注いでいるので留学生も健康で安心してレッスンに集中できます。
そして先生の中には日本語の出来る方がいて、日本人のためにフランス語講座などもあるようです。
パオラ・カンタルポ校長はモンテカルロ・バレエ団で50歳までプリンシパルダンサーとして踊り続けたダンス愛の塊のような方、自ら教える時もレオタードにタイツで熱く指導していました。また、マルセイユ・バレエ学校の高学年(DNSP)の校長でもあり南仏のバレエ学校における重鎮。
バオラ校長曰く、
「新しい施設になって生徒達のやる気やロゼラ・ハイタワーの生徒であるという誇りが高まり、今までよりさらに充実したバレエ学校生活が送れるようになった事を大変嬉しく思っています。」
「日本からの生徒は技術がしっかりしていて表現力もあり、学ぼうとする意気込みがある。入ったばかりの時は経験がないためかコンテンポラリー・ダンスが弱い子が多いが何年かするうちにすっかり自分のものとして吸収してしまう子が多い。」との事。
現代のバレエ・ダンス事情に対応してコンテンポラリーにも力を入れていて個性を重んじる校風。日本にも若年からこんな総合的なバレエ教育のできる学校がいつか出来れば良いと思います。
カンヌの新しい芸術村はこれからも益々優秀な人材を輩出していく事でしょう。
文:遠藤康行