『スペイン国立バレエ団 2024年日本公演』プレビュー
文=森菜穂美
この秋6年ぶりに、スペイン国立バレエ団が来日する。
2019年に前芸術監督アントニオ・ナハーロ(現アントニオ・ナハーロ舞踊団芸術監督、フィギュアスケートの振付でも著名)からバトンを受け継いだ鬼才ルベン・オルモが率いている。オルモが監督に就任して初めての公演『インボカシオン』が上演直後に世界的なパンデミックが起きたため、今回は6年ぶりの来日公演となる。
スペイン国立バレエ団は、1978年、スペイン文化省により創設。
初代芸術監督には伝説的な名舞踊手アントニオ・ガデス(1978-1980)が就任した、世界最高峰のフラメンコ・バレエ・カンパニーだ。
世界中の高名な劇場で公演を行い、幅広い観客から愛されているが、1989年の初来日以来たびたび来日公演を開催してきた。
その情熱的でスタイリッシュなパフォーマンスで、バレエ団は日本の観客の心をギュッとつかんできた。
オルモ芸術監督は98年にスペイン国立バレエ団にダンサーとして入団し、99年、2001年の来日公演ではソリストとして参加していた。
2002年に退団後、エバ・ジェルバブエナ舞踊団等で活躍。自らのカンパニーを率いたのち、2011年から2013年までアンダルシア舞踊団監督を務め、2015年にはスペイン文化省の舞踊国家賞を受賞している。
そのオルモが国立バレエ団を率いてからは初めての来日公演となるため、カンパニー共々、並々ならぬ意気込みで来日公演に臨んでいる。
スペイン舞踊には、フラメンコをはじめエスクエラ・ボレーラ(17世紀のフランスやイタリアの宮廷バレエの影響を受け、 18世紀にスペインの民衆舞踊をとり入れて生まれた舞踊ボレーロが、19世紀にまとめられたもの)、ダンサ・エスティリサド(フラメンコやボレーラ、民族舞踊のテクニックを使ってクラシックなど、オリジナルの曲ではない音楽で踊る作品)、民族舞踊と四つのジャンルがあり、さらに現代ではコンテンポラリーを取り入れる場合もあり、実に多彩で魅力的な舞踊ジャンルとなっている。
伝統を守り受け継ぎながらも、現代の洗練を身に着けたカンパニーであるスペイン国立バレエ団で、オルモはスペイン舞踊の普及と革新に心血を注いできた。
国立バレエ団としての基本は守りつつ、世界中で愛されているフラメンコをより強化することに取り組んできた。
フラメンコにも新しい潮流を入れようと前衛的な要素を取り入れつつも、今まで以上に良い作品を高いレベルで提供するべきだとの信念を持っている。
今回の来日公演では、AプロとBプロの二つのプログラムが上演される。
Aプロ「世代を超えて」〜generación〜(ヘネラシオン)は、華やかでスケールの大きな群舞の魅力が堪能できる王道プログラム。
さまざまな世代の振付作品で、スペイン舞踊の多彩な魅力を楽しむプログラムとなっている。幕開きを飾る『リトモス』の初演は40年前。
発表された当時は前衛的な作品だったが、今やバレエ団を代表する古典となり、優雅なスペイン舞踊を堪能させてくれる。
ホセ・グラネーロ振付の『ボレロ』はスペイン国立バレエ団ならではのダイナミックな群舞の魅力が発揮されている人気作品で、来日公演でもたびたび上演されてきた。モーリス・ベジャールの『ボレロ』は良く知られた不朽の名作だが、ベジャールの『ボレロ』に続く圧巻の振付がスペイン舞踊でのグラネーロ振付の『ボレロ』であり、ソロにはクラシック・バレエの要素も多く感じられる。
バレエファンにとっても大変魅力的で興奮すること間違いない、カンパニーを代表する傑作だ。
フラメンコならではの華麗な足捌きで魅せる男性スペイン舞踊ソロの傑作『サパテアード』やコンテンポラリー・ダンサーによる振付の作品もあり、21世紀のスペイン舞踊も楽しめる。
カナーレス振付の『グリート』(97年)では、フラメンコのエッセンスも満喫できることだろう。
Bプログラム「祈り」〜INVOCACIÓN〜(インボカシオン)は2019年にオルモが監督に就任して初めての公演だった。
フラメンコからスペイン舞踊まで、世界最高峰の真髄が目白押しの贅沢なラインナップで構成されている。ロマンチック・バレエとも関係の深いスペインの古典舞踊、エスクエラ・ボレーラへのオマージュ『インボカシオン・ボレーラ』に始まり、ルベン・オルモ芸術監督振付の繊細なソロ『ハウレーニャ』、前監督アントニオ・ナハーロの振付による帽子やマント、カスタネットも使った“ザ・スペイン舞踊”的な『イベリア賛歌』、そして現代フラメンコ舞踊の礎を築いたマリオ・マジャへのトリビュートである華やかで楽しい『フラメンコ組曲』。
いずれも古典に、先人に学び、インスパイアされて新しい地平を開いていく作品となっている。
伝統と革新を融合し、躍進を続ける鬼才ルベン・オルモによる新生スペイン国立バレエ団。魂を奪われるような熱い興奮と陶酔、感動の舞台が観客を待っている。
【公演情報】
世界最高峰のフラメンコ・バレエ、6年ぶり待望の来日!
総勢80名超のカンパニーによる圧巻の舞台は必見!
今回も、絶対に感動が待っている。出会うのが怖いぐらいの感動が、やってくる。
◆日時
2024年
11月20日(水)19:00開演 Aプログラム
11月21日(木)15:00開演 Aプログラム
11月21日(木)18:30開演 Aプログラム
11月23日(土祝)13:00開演 Bプログラム
11月23日(土祝)16:30開演 Bプログラム
11月24日(日)13:00開演 Bプログラム
◆会場:東京文化会館 大ホール
詳細ホームページはこちら⇒ https://spain-ballet.com/
【演目】
Aプログラム 世代を超えて~generación(ヘネラシオン)
~まさに壮観!華やかでダイナミックな群舞の魅力が堪能できる王道プログラム
『リトモス』 振付:アルベルト・ロルカ
『ハカランダ』 振付:ルベン・オルモ(11/20,21夜)
『パストレラ』 振付:アントニオ・ルス(11/21昼)
『サパテアード』 振付:アントニオ・ルイス・ソレール
『ボレロ』 振付:ホセ・グラネーロ
『グリート』 振付:アントニオ・カナーレス
Bプログラム 祈り~invocación(インボカシオン)
~フラメンコからスペイン舞踊まで、世界最高峰の真髄が目白押しの贅沢ラインナップ!
『インボカシオン・ボレーラ』 振付:ルベン・オルモ
『ハウレーニャ』 振付:ルベン・オルモ
『イベリア賛歌』 振付:アントニオ・ナハーロ
『フラメンコ組曲~マリオ・マジャに捧ぐ』 振付:マリオ・マジャミラグロス・メンヒバル,アスンシオン•ルエダ“ラ・トナ”,マノロ・マリン,イサベル•バジョン、ラファエラ・カラスコ
主催:朝日新聞社 サンライズプロモーション東京 MIYAZAWA&Co.
後援:スペイン大使館 インスティトゥト・セルバンテス東京 日本フラメンコ協会